いつまでもイヤホンリスニングを楽しむために

いつでもどこでも、誰にも気兼ねすることなく音楽を楽しめるイヤホン。いつでも好きなミュージシャンの曲と一緒にいたいと願う私たちにとって、スマートフォンと共になくてはならないアイテムの1つです。


しかしこのイヤホンが原因で、身体に負担がかかることをご存知でしょうか。

大音量の音が難聴に繋がりやすいのです

身体中に響き渡る大音量。ライブハウスで聴く音楽は特別に楽しいものと感じます。しかし大きな音を聴き続けると、くぐもった音だと感じるようになったり、キーンといった耳鳴りが続くことがあります。


これは音響性難聴、音響外傷と呼ばれる症状です。耳から入った音は、鼓膜のさらに奥にある蝸牛と呼ばれる螺旋状の器官内にある有毛細胞が音の振動を電気信号に変えて脳に伝えるのですが、大きな音を継続して聴いているとこの有毛細胞が傷ついてしまうのです。ライブハウスの音(100dB~110dB)だけではなく、イヤホンのボリュームを上げすぎているとき(95dB)にも同じことが起こります。

 

イヤホンのボリュームを上げすぎないように

2019年2月、WHO(世界保健機関)とITU(国際電気通信連合)は難聴を防ぐための国際規格を発行しました。ガイドラインによれば、ライブハウスのほぼ最前列の音圧レベルの場合、1週間に聴いてもいい時間は大人で10分以下(!)。イヤホンのボリュームを最大にしているような状態でも75分までとなっています。


一時的に大音量の音を聴いたとしても、耳を休ませておけば有毛細胞は回復します。しかし連続して大音量の音を聴き続けると、音を聴き取るための重要器官である有毛細胞そのものが壊れてしまいます。こうなってしまっては手遅れ。実は有毛細胞は一度壊れてしまったら自発的に再生することがない細胞なのです。


しかも蝸牛の入り口付近にある、高音域を変換する有毛細胞から傷ついていきやすいのが大きなネックとなります。もしこの有毛細胞が壊れてしまった場合でも、普通に周囲の音を聴き取ることができるから症状に気が付きにくいのですが、人と喋ったときに言葉の子音が聞こえづらくなり、会話による意思の疎通がしにくくなってなってしまうのです。

 

小音量でも長時間リスニングは難聴の原因になります

じゃあ音量を下げて聴き続けたらいいのでしょうか。いえ、実は音量が小さくても長時間のリスニングを続けると、耳への負担が重なってしまいます。控えめの音量(80dB)の場合だと週に40時間、耳に負担がかかっていないだろうと思える音量(83dB)でも、週に20時間までが限度とされています。


片道1時間ほどの通勤・通学のときだけイヤホンで音楽を聴くというのであれば、問題がおきにくいといえます。しかし仕事中、自習中、帰宅後のプライベート時間もイヤホンで音楽を聴き続けてしまうと、難聴の危険性が高くなってきます。

 

耳を大事にしながら音楽と付き合いましょう

老化による難聴は避けられないとしても、できるだけ長く音楽を楽しんでいきたいのであれば、次のことに気をつけて、リスニング時に耳への負担を極力減らしていく心づもりをしておきましょう。

・音量を下げる

音量を上げれば上げるほど蝸牛内の有毛細胞に負担が増えます。。逆を言えば、音量を下げれば下げるほど負担が減ります。普段は爆音で音楽を楽しみたいという気持ちを抑え、BGMくらいの小音量にしてイヤホンでの音楽を楽しみましょう。

・耳を休ませる

どうしても大音量で音楽を聴きたいときもあるでしょう。そのようなときは音楽再生をする時間を制限します。一日1~2曲だけに留めておき、音楽を聴かない時間帯を作りましょう。

・遮音性を高くする

周囲のノイズが聴こえてくるイヤホンだと、せっかくの音楽が小さく聴こえるような気がしてボリュームをあげてしまいがちです。ならば周囲のノイズが入りにくいように、自分の耳穴サイズにピッタリのイヤーピースを用いて遮音性を高めたり、ノイズを電気的に打ち消すノイズキャンセリングイヤホンを使いましょう。

 

普通のイヤホンと骨伝導イヤホンを使い分けましょう

イヤホンには、耳穴のなかにイヤーピースを差し込む通常のイヤホンのほかに、こめかみ部分の骨に当てるようにして装着し、骨から伝わる振動で音を聴き取ることができる骨伝導イヤホンがあります。


この骨伝導イヤホンは、耳への負担が軽いイヤホンです。その代わりに低音が小さく聴こえるという特徴もありますが、長時間音楽を聴きたいときや、音声チャット・ビデオミーティングを行うときにはピッタリ。状況に合わせて普通のイヤホンと骨伝導イヤホンを使い分けることで、耳へのケアができるようになります。ぜひ実践してみてください。